四月は君の嘘
作者:新川直司
出版社: 講談社
掲載誌: 月刊少年マガジン
巻数:第01巻(2011/09/16)~第11巻(2015/05/15)
「四月は君の嘘」は新川直司さんの中学生ピアニストとヴァイオリニストに焦点をあてた、青春漫画です。
2012年度マンガ大賞にノミネートされており、2014年秋から連載が完結する2015年春にあわせる形でアニメも放送され、その後、広瀬すずさん主演で映画化されています。
主人公は幼少時代から母の厳しい指導の下、正確無比な演奏技術で様々なピアノコンクールで優勝していた天才少年、中学3年生の有馬公生(ありま こうせい)です。
母親の厳しい指導は、母親自身が病弱だったこともあり、生きている間に子供がピアノで生計を立てられるように、コンクールで優勝できるよう正確無比な演奏をするためのものでした。
その結果、複数のコンクールで優勝し、クラシック会で有名ではあるのですが、「ヒューマンメトロノーム」、おもしろくない演者と評されることもあります。
しかし、公正が小学校5年生だったときに事件が発生します。
公正は母親に元気になって欲しいと想って感情を込めた演奏をしたのですが、正確無比な演奏を求めていた母親はそれを良しとせず、公生に体罰の如く指導します。
我慢の限界に達した公正は「お前なんか、死んじゃえばいいんだ」と言ってしまいます。
(ちなみに以前紹介した漫画「この音とまれ!」でも、筝の天才演者が自身の想いを乗せて演奏したが、母親に伝わらなくて対立してしまうという場面があります)
そして、それが不幸にも母親への最期の言葉となってしまい、それが原因となって、その後の公正は演奏中に自身の奏でる音が聞こえなくなるというスランプに陥ってしまい、ピアノ演奏から離れています。
(母親が指導者であり、母親の影響でピアノから離れた天才ピアニストという意味では、恩田陸さんの小説「蜜蜂と遠雷」の栄伝亜夜と同じです。
私が見た作品だけだと思いますが、どうも、幼き天才演者の挫折には母親がつきものな気がします)
そして、そんな楽譜に忠実、正確無比な演奏で有名だった公正とは真逆に、自身の感性、感情を重視する個性的なヴァイオリニストとして本作のヒロインである宮園かをり(みやぞの かおり)の存在があります。
物語はこの二人を中心に、よき理解者である友人やお互いを高めあうためのライバルと一緒に成長していく青春漫画です。
二人の関係は、初回の1話に2度にもわたって出てくる次の言葉にまとめられているように思います。
1回目は公正が帰宅時の途中で幼馴染の椿(つばき)から言われたとき、及び、授業中にその場面を思い出している場面です。
(尚、美和というキャラクターはただのモブキャラ、知人Aのようです)
美和が言ってたよ
(「好きな人がいると 全部がカラフルに見える」って)
「彼と出会った瞬間 私の人生が変わったの」「見るもの 聞くもの 感じるもの
私の風景全部が カラフルに色付きはじめたの」ーって
ーでも 僕には
僕には モノトーンに見える
譜面のように 鍵盤のように
2回目は公正が休日の公園で椿たちと待ち合わせした際に、初めてかをりを見たときです。
美和が言ってたよ
「彼と出会った瞬間 私の人生が変わったの」
「見るもの 聞くもの 感じるもの私の風景 全部が カラフルに色付きはじめたの」
「世界が」
「輝きだしたの」
このように2回目には1回目になかった台詞が確認できます。
かぎかっこの使い方から、あくまで追加された台詞も美和が言ったものだと思われますが、1回目に思い出すことすらなかった台詞を、かをりに初めて出会った際に公正がリピート(この作品的には『リフレイン』)したのが印象深いです。
尚、3巻ではちゃんと公正の言葉で表現されています。
あの日から 僕の世界は鍵盤でさえ カラフルになっていたんだ
ちなみにこの作品を最近紹介した映画「エリザベスタウン」と似た時期に記事にしたのは、宮園かをりが日本作品でマニック・ピクシー・ドリームガールの代表格かなと私が思っているからです。
公正の作中の台詞でも次のようにあります。
天真爛漫 奇想天外 ジェットコースターみたいに 僕は振り回されてばかり
タイトルの「君」とはそんな宮園かをりのことを指していると思われます。
「嘘」についてはここでは言及しないため、まだ未読の方は1度ご覧になることをお勧めさせていただきます。
また、漫画も音楽という難しい題材にも係わらずワンピースの尾田先生がフジテレビの番組で次のように答えたとのように、非常にわかりやすいです。
「聞こえる音楽。漫画がもっとも苦手なジャンル“音楽”の表現がまあ見事」
もちろん漫画もいいのですが、アニメ版もカラフルで動き、音がありお勧めです。
特に、初代OPのGoosehouseさんの「光るなら」はかなり作品にマッチしていて素敵なOPです。こちらもよろしければ1度ご覧いただければと思います。
そして、今夏舞台もあるようですね。生演奏も聞けるということで期待してもいいのでしょうか。
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