この音とまれ!
作者:アミュー
出版社: 集英社
掲載誌: ジャンプSQ.(ジャンプスクエア)
巻数:第01巻(2012/11/02)~第15巻(2017/07/04)
「この音とまれ!」はアミューさんの筝曲部を舞台にした青春漫画です。
筝という日本の伝統楽器ではありますが、比較的マイナーな題材を扱っています。
ただ、作者のアミューさん自身が3歳から筝に係わっていたこと、作者さんの
周囲も筝奏者・指導者がいるということで普段知ることができない筝について、
この漫画で知ることができます。
(※ただし、作者さんが1巻の後書きで次のようにおっしゃっている点は注意です。)
筝には色々な流派や流儀があり それぞれによって 弾き方 教え方 とらえ方など
様々です。
なので 『この音とまれ!』で 描く事が全てではなく 奥深い筝の世界の
ほんの一つだと思って 読んでいただければ幸いです
物語は高校の入学式から始まります。次の三人がこの話の筝曲部の中心です。
昨年3年生が卒業し、独りとなったが、卒業生との約束を果たすために、周囲から
馬鹿にされながらも筝曲部を続ける眼鏡真面目キャラの倉田武蔵(くらたたけぞう)。
札付きの悪だったが、筝職人であったじいちゃんのおかげで人を信頼できるようになり、
そのじいちゃんの作った筝曲部に入ることを目的としていた久遠愛(くどおちか)。
琴の名門、鳳月家のお嬢様であり、いわゆる天才、筝だけに打ち込んできたために、
若干人付き合いが苦手な美少女、鳳月(ほうづき)さとわ。
話は少年誌らしく、いわゆるシンプルな王道物がベースとなっているようです。
これは作者さんのなじみのない筝の世界が遠い世界にならないようにという
配慮もあるようです。
(『コミックナタリー 「この音とまれ!」アミューインタビュー』記事より)
ただ、掲載誌は少年誌であるのですが、作者のアミューさんは「桜アミュー」名義で
少女漫画雑誌「りぼん」で「龍星群」という作品でデビューしています。
作者さんは少年誌向けにいろいろと工夫されているようで、もともとの画力も
あるのでしょうが、表情の移り変わりの丁寧さや、線の見易さ等、両方のいい
部分を取り入れているように思え、とても絵がきれいで見やすいと思っています。
(初期のさとわちゃんは下まつげ周辺が少女漫画チックに見える場面もありますが)
話も少年誌の高校生青春物として、筝に取り組む姿勢が中心にあるのですが、
周囲の人間との確執や恋愛要素もほどよく取り入れられていると思います。
そして、この作品、音楽を題材にしており、筝のオリジナル曲を作中で使用して
いるのですが、なんとその曲を実演してYoutubeの「ジャンプSQ.公式」チャンネル
でその演奏を聞くことができ、漫画ではどうしても表現しきれない音と、
筝の演者のかっこよさが確認できます。
タイトルについて
文化部の青春物では「ちはやふる」、「ナナマルサンバツ」、
「とめはねっ! 鈴里高校書道部」等、タイトルがその題材にちなんだものが多いです。
(文化部がメインではないですが、「ヒカルの碁」も)
この作品は「音」というタイトルは入っていますが、筝が連想されるワードは
入っていないように見えます。三味線を題材にした「ましろのおと」もそうなのですが。
ただ、タイトルが筝を連想できるものにするかどうかについては作者さんや担当者さんが
きっとものすごく色々検討しているわけであり、別に何も不思議なことはありません。
不思議に思ったのは、「とまれ!」の部分です。
この作品、演奏場面がいくつかあるのですが、以下の印象的な部分があります。
「届け 届け 届きやがれ」
「それはね 出会ってしまったから -関わらずにはいられない-
心を激しく揺さぶられる音に」
上記を見れば、どう考えても「止まれ」ってことはないでしょう。
となると「留まれ」や「富まれ」と考えるのが自然に思えます。
そして、気になるのは「弦を止める」のような筝の技術的な意味合いも
「とまれ」にあるのかどうなのかといったところでした。
そこらへんは筝をやったことがない人にはわからない点ですがどうなのでしょう。
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