映画 ~スクラップ・ヘブン~

スクラップ・ヘブン

配給: オフィス・シロウズ、シネカノン

監督:李相日(り そうじつ/イ サンイル)

脚本:李相日

出演:加瀬亮、オダギリジョー、栗山千明

公開日:2005/10/08

ジャンル:サスペンス


「スクラップ・ヘブン」は刑事を夢見てデスクワークの日々を過ごす警察官が、バスジャック事件に巻き込まれたこととその後の偶然をきっかけに知り合った相棒と復讐代行業へ逃避していくなかで、自分と周囲を見つめなおしていくヒューマンサスペンス映画です。


監督は「69 sixty nine」、「フラガール」、「悪人」、「怒り」等の数多くの監督である李相日さんです。

「69 sixty nine」や「怒り」等は原作がありましたが、本作品は原作がなく、李相日さんが脚本を務めているため、より一層の李相日さん色が味わえる作品かもしれません。


加瀬亮さん、オダギリジョーさん、栗山千明さんの主演に、加瀬亮さん演じる警察官の上司役を柄本明さんが演じる等、かなり豪華な演者となっています。



あらすじ


主人公のシンゴ(加瀬亮)は庶務課でデスクワークに勤しむ警察官です。

人を助けられる刑事の職務に憧れを抱いている一方で、退屈な日々に不満を抱いています。


ある日、先輩のベテラン警部補に連れられてストーカー被害者の1周忌に同行することとなりますが、そこで遺族である幼い子供から冷たい仕打ちを受け、なぜ事前に相談を受けていたのに事件を防ぐことができなかったのか、事が起こってからしか動けないという警察に対して空虚感が増していくばかりです。


そんなあるとき、バスジャックに巻き込まれてしまうことになります。


バスには自分も含めて乗客が三人、“正義感にカビのはえた警察官”であるシンゴ、“爆薬に夢を込める薬剤師”(栗山千明)、そして“孤高の便所掃除人”(オダギリジョー)です。


バスジャック犯と対峙し、最終的に事件は解決するのですが、その事件に対しても、その事件後もシンゴの持つ世の中への失望感は増えていくばかりです。


しかし、事件から3ヶ月後に偶然、バスジャック時に乗客であった便所掃除人と再開し少し行動を供にしたところ、二人は意気投合することになります。

そして、一緒に復習代行人を始めてみないかと持ちかけられます……


世の中を肥溜めにしちゃってる馬鹿ども こいつらに1番足んないものは何だと思う?
想像力が足んねーんだよ


それそれそれ 想像力があれば俺も世の中ももうちょっとましになっているはずだと思うんだ


おめでたいことにさ あんたには殺したい政治家も 死ぬほど欲しい女もいないのよ

じゃああんたが苛立ってる原因は何なんだよ 敵は誰なんだよ

じーとデスクにかじりついてたって世の中1ミリも動かないぞ おまわりさん



感想


当初は李相日さんが監督している作品だと知らずに出演者目当てで見た作品でした。


「重力ピエロ」のときもそうでしたが、登場人物を平凡な人間と思わせつつ、それと同時に味のあるかっこいい存在とも思わせる不思議な魅力を加瀬亮さんからは受けてしまいます。


もっと人に頼られる存在になりたい、環境さえ変わればきっと自分も変われる、悪いのは周りのせいだ、周りの人間には想像力が足りない、と主張する一方で、じゃあ自分自身どうなのか?というモラトリアム人間、アダルトチルドレン的な危うい不安定で受動的な男が主人公です。


「アカルイミライ」では不安定で受身的な側の役でしたが、今回は主人公の行動を変えるきっかけ側で登場する役を演じているのがオダギリジョーさんです。


こちらのキャラクターはシンゴの相棒としてまさしく自由奔放であり、オダギリジョーさんの独特の雰囲気とあわせていい存在感を放っています。


物語の要所要所で重要な役割を果たす薬剤師の役は、孤高な存在を演じることに関して栗山千明さんほど似合う人もなかなかいないと思うため、満足できます。

(映画の内容を無視すれば、もっとたくさん見たかったという感想がありますが)


ちなみに主要キャラクターは上記の三人ですが、映画を見ていたらシンゴ以外はまったく言っていいほどキャラクター名が出てこなかったように思います。

私は最期まで他の二人の役名がわかりませんでした。


この映画、上記三人以外にもう一人主要人物といっていい存在がいます。

それは、柄本明さんが演じる先輩ベテラン刑事です。


本作品は警官が奔放な便所掃除人と出会うことで変わっていくある種のバディムービーなのですが、むしろ主人公の転機となるべく要所要所では、このベテラン刑事が登場し、存在感を発揮しています。


もし、主人公が何かしらのきっかけで、このベテラン刑事とバディで行動することを選択していれば、また違った結末となっていたであろうと思うと、少し切ない感じが残ります。


後半も重たい雰囲気は残りますし、汚すぎるトイレも出てきます、後半もすべて説明しきっていない部分があるのかもしれませんが、おもしろい映画だと思います。



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