小説 ~娼年~

娼年(しょうねん)

著者名: 石田衣良(いしだ いら)

出版社: 集英社

発売日: 2001/07/05

ジャンル:恋愛、ヒューマン


「娼年」は石田衣良さん著作で、日々の生活に退屈している大学生がとあるきっかけから

娼年(いわゆる男娼、コールボーイ)として働くことで成長していく恋愛小説です。


個人的には恋愛というよりも、主人公の人としての経験の積み重ねと成長に焦点が

あたっている印象が強いため、恋愛小説と聞くと違和感を覚えるのですが、恋愛小説です。


第126回直木賞候補作であり、「逝年(せいねん)」のタイトルの続編もあります。

本作品と続編で幸田育子さん作画で漫画化、三浦大輔さん演出で舞台化が成されています。



あらすじ


大学も友人も家族も、そして女性もつまらないと感じている大学生の

森中領(もりなか りょう)は、アルバイト先のバーで働いているときに、

女好きのホストである友人の進也(しんや)が同伴で店に連れてきた

大人の女性、御堂静香(みどう しずか)との会話を通して、

「女性やセックスがつまらないというのは、問題あるなと思うな」

との指摘を受けます。その帰り際に静香から領へと名刺が渡されますが、

領は名詞をすぐにゴミ箱に握りつぶして捨ててしまいます。


1週間後、また静香が今度は一人でバーにやってきます。

静香はセックスが退屈だという領に対して、そのセックスに値段をつけて

あげると言います。領は悪意をもってそれに応えます。

「いいですよ。買ってください。どうせ今夜も帰って寝るだけだ。
退屈なのは同じです」


領はその時とその後の経験をきっかけに、日々の生活の退屈な檻を破れるかも

しれないと、娼年として「情熱」を探すことになり、様々な女性や同僚を通して

普通では体験できないことを積み重ねていくことになります。



感想


主人公があらゆるものが退屈であるとどこか達観している点、考え方や

行動は草食系だけど、やたらもてていつのまにか肉食系になっている点等、

主人公のタイプとしては村上春樹さんや本多孝好さんの作品で見るタイプに

近い印象を受けます。


また本作品で取り上げられている女性は通常とは異なると言っていい性癖を

持っているようですが、どこか冷静で上品な感じに描かれている印象を受けました。


よって、性描写が多くある作品ですが決してそれが下品だとか醜悪だとかいう

印象は持ちませんでした。それが良いのか悪いのかはわかりませんが、

読みやすいとは思います。


冒頭でも言っていますが、やはりちょっとした厭世観を持つ主人公が

様々な女性との経験を通して価値観が変わっていく話のウェイトの方が

強いと思います。


恋愛として見たらあの結末は個人的に消化不良になっていまいます。

まあ、そのための続編なのかもしれませんが。



舞台化について


最初のほうでも書いていますが、こちらの小説は2016年8月から9月にかけて、

東京、大阪、福岡の3箇所で舞台公演を実施しています。


演出と脚本を映画「何者」の監督も務めた三浦大輔さん、

主人公の領役に松坂桃李さん、静香役が高岡早紀さんと豪華なのですが、

しっかりとベッドシーンも舞台で演じるということで話題になりました。


前回記事の「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」で原作より映画の

表現が温くなっていると聞いたときに、映像化すれば尺の都合もあるし、

読者各々が頭で想像できる範囲と監督が限られた実写の中で表現できる範囲に

差があるのは仕方のないことではないかと思っていました。


この作品についても、もし映画化とかになっても、きっと登場人物が

抱えているアブノーマルな部分は、時間や規制の都合で安っぽくなってしまう

可能性が高いのかなとか考えていました。


そんな凝り固まった頭をしていれば、舞台化などと聞けば当然驚いてしまうわけで、

リアルタイムの場で、そして舞台という、時にはオーバーアクションが求められる場で

どう表現するのか、かなり興味がそそられる内容となっています。


実際に評判もよかったようであり、やはり表現したい何かがあったときに、

強い意思を以って実現しようとする方々の力は偉大だなと改めて考えさせられました。



マンターンのBLOG

過去に見た小説や映画の内容の備忘録 更新停止中 工事中 → https://manturn.blogspot.com/

0コメント

  • 1000 / 1000