映画 ~ヤング・ゼネレーション~

ヤング・ゼネレーション

原題: Breaking Away

配給: 20世紀フォックス

監督:ピーター・イェーツ

脚本:スティーヴ・テシック

出演:デニス・クリストファー

公開日: 1979/07/13(日本 1980/04/05)

ジャンル:青春、スポーツ


「ヤング・ゼネレーション」は大学進学も就職もせず、友人3人と日々を無為に

過ごす自転車好きな19歳の主人公が、家族や恋、周囲の人間関係に悩みながら、

前向きに明るく生きていこうとする青春映画です。


本作品は1980年開催の第52回のアカデミー賞で脚本賞を受賞しており、

また、「AFIアメリカ映画100年シリーズ」の2006年版「感動の映画ベスト100」の

8位にランキングされています。



主人公のデイヴ(デニス・クリストファー)を含む仲の良い4人組みはいわゆる

モラトリアム人間、大学に進学せず、就職もせず、19歳という大人の仲間入り

しようとする年齢の中で、社会に溶け込めず、仲間と集まって焦燥感や閉塞感を

感じる毎日を過ごしています。


4人組みのリーダー格のマイクは高校時代にアメフトの花形ポジションにいた存在であり、

大学に進学していればジョグスの一員として活躍していたはずだと考えており、

4人の中でも特に大学生に対するコンプレックスや敵愾心が強いです。

シリルは人付き合いがよいのですが、自発的な行動や意思があまりないように見えます。

体が小さいことを気にしているムーチャは彼女との結婚を予定しているのですが、

金欠で困っているにも関わらず働くことが続かない状態です。


そして主人公のデイヴはそんな彼らと一緒にいつつも、イタリアに心酔しているという

側面があります。街で会う人にはチャオとイタリア語で挨拶し、イタリアのオペラを

歌いながら自転車をこいで帰宅し、とにかく陽気で悩みなんてまったくないように

うつります。ただし、そのイタリアへの傾倒が夢なのか、現実逃避なのかわかりません。


デイヴの父親は働かずにブラブラと過ごしている息子にご立腹のようです。

母親は子供がどう過ごしていようとも、基本はやはり子供の味方になってくれています。


一方で、デイヴはとあるきっかけで知り合った女子大生に、イタリアの留学生と

嘘をついてお近づきになろうとします。



この映画では様々な場面でデイヴのイタリア好きが活かされています。


イタリアが好きだからロードバイクに興味をもったのか、ロードバイクが好きだったから

イタリアに興味をもったのかがわかりませんでしたが、冒頭のシーンや、

恋のきっかけとなるシーン、終盤の大学生とのロードレースの場面等、

随所に爽快感のあるロードバイクのシーンが出てきます。

(ロードレースといえば欧州ですが、イタリアよりもフランスのイメージが私は強いです)


飼っている猫の名前もイタリア風に改名したり、気になる女性へのアプローチも相手の

寮まで行ってセレナーデ(カンツォーネ)を披露するなど、イタリアかぶれが徹底しています。


このイタリアかぶれが徹底しているおかげか、父親との衝突に関しても、

父親がふらふらしているデイヴに対して馬事荘厳を浴びせるというよりは、

イタリアのオペラのレコードやイタリア料理に対して間接的に文句を浴びせる形を

とっており、雰囲気が重くて見てる視聴者のほうの気分が沈むということもありません。

(イタリアが好きな人にとっては少し不快になるかもしれませんが)


本作品にはそういったコミカルな要素が、下手をすれば重くなりすぎてしまいそうな

各シーンで上手く自然に緩衝材として利用されていると思います。


他の例として、主人公4人が大学生に襲われた友人のシリルの報復として大学に殴りこみに

行こうとするシーンがあるのですが、ターゲットがいると思われる施設に入る際に、

両開きタイプドアの閉切側から入ろうとして一旦もたつくカットがあります。


初めて訪れる施設に入場する際に見られる、あるあると思わせるようなコミカルなカットが

殴りこみというある種の乱暴なシーンの緩衝材となっています。

また、このカットは上記の笑いの要素を含めると同時に主人公達が普段その施設を

利用していない、別世界の異人であることを象徴する意味も持っています。



この映画のシナリオはどちらかといえば王道で、特別に奇をてらった設定があるわけ

ではないように思っています。ただ、社会に出る、大人になる、というある種の

普遍的なテーマの中で、コミカルな要素と自転車レースという爽快感のある

スポーツ要素を加えていることで、悶々とする焦燥感を適度に感じつつ、

全体として前向きで明るい方向に感じられる案配が絶妙で、印象に残る映画です。



ちなみに原題は「Breaking Away」であり、”脱却”のような意味合いだと思います。

邦題の「ヤング・ゼネレーション」ですが、"ジェネレーション”を”ゼネレーション”

とコミカルに表現するところがこの映画にはまっていて、最初は違和感がある

タイトルだったのですが鑑賞後はかなり気に入っています。

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