漫画 ~累-かさね-~

累-かさね-

作者:松浦だるま

出版社: 講談社

掲載誌: イブニング

巻数:第01巻(2013/10/23)~第11巻(2017/06/23)


「累」は醜い外見を理由に幼少から凄惨な扱いを受けてきた主人公が

容姿を交換する能力を駆使して華やかな演劇の世界に執着するサスペンス漫画です。


主人公の淵累(ふち かさね)は美貌と演技力により伝説の女優と称される淵透世(ふち すけよ)の

娘ですが、親子と思えないような酷い容姿をしていたため幼少期からいじめられています。


数多くのいじめに耐え忍んでいた折、そのいじめの一環として小学校5年生の学芸会で

シンデレラの主役を任されることになります。


大女優の娘としてのプライドからか、累は例え姿形が悪くとも演技さえ

上手くこなせれば周囲の人に認められるかもしれない、

その想いで周囲の妨害にも耐えながら必死に練習します。


本番、舞台にあがった直後こそ初めての経験に緊張するのですが、才能か努力か

演じることに集中した累はその立振る舞いから周囲の尊敬を一時的に集めます。


しかし、いじめの主格にとってそれはおもしろいことではなく、

強制的に累を演技級の舞台から降ろし、累を体調不良ということにして

代役として自身が舞台にあがろうとします。


累は覚悟を決めます。


やっぱり どんなに努力しようと どんなに上達しようと
私の顔では 母の娘だと証明することすらできないのだ
…………… そんなの わかっていたことじゃない


その唇から どんなに 汚い言葉がこぼれようと
可愛らしい顔の均整は崩れない うらやましい ほしい


その顔がほしい


そして、独りぼっちで本当に本当に本当につらくなったときにするように母から

言われていた次の行為を実行します。

『口紅をぬって あなたのほしいものに くちづけを』


すると容姿だけは綺麗だったいじめっこと累の容姿が入れ替わります。

これが初めて累が容姿を交換した場面です。


きれいな容姿を得た累は舞台に再び舞い戻ります。

今度は演技力だけではない、その見た目もあいまって累はこれまで経験したことのない

尊敬のまなざし、賛美の声を浴びることになり、女優として生き続けたいと願います。


リップ・ロッドを使って美少女戦士に変身したり、プリンセスのキスによりカエルの姿

から変身したり(正確には元に戻るですが……)するようなキラキラした話だといいのですが、

この話の変身はあくまで一時的なもの、そして大きな問題を内包したものでしかありません。


容姿を『交換』するということは、キスされた相手には酷いと形容される累の普段の姿が

鏡に映されることになります。累は当然それに対策をする必要があるのですが、ときには

大胆に、ときには演出家で累の協力者となる羽生田釿互(はぶた きんご)の協力を得ながら、

成長していく中でも舞台にあがり続けます。


自身のひどい容姿に加え、顔を交換することで一部の人間を不幸にしたことに対して

容姿だけでなく心まで醜くなったと罪悪感を覚える場面があるも、

それでも演劇・舞台の世界にしがみつく主人公の狂気や嫉妬と、美しい人間になって

誰かに愛されたいという欲求を描いた作品となっています。


前回記事で同じ演劇・舞台を題材にした小説「シアター」を紹介しました。

そのときにドロドロとしたものではなく、キラキラした青春ものとして

おもしろいといっていたのですが、やはりこういったドロドロしたものも

おもしろいものです。


本作は2018年に公開予定で実写映画化が発表されました。今から楽しみです。

(8月8日発売予定の雑誌「イブニング17号」で主要キャストの発表があるとかないとか……)



江戸時代の怪談話 累ヶ淵(かさねがふち)

この漫画のタイトルは主人公の名前からとっていますが、コミックス3巻の

巻末でこの作品は江戸時代の怪談話「累ヶ淵(かさねがふち)」がモチーフと

なっていることが作者さんから紹介され、(ページ数の都合上本当に)簡単な

あらすじも紹介されています。


累の他にも野菊(のぎく)など一部の主要人物の名前のもとになっているようです。

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