映画 ~怒り~

怒り

配給:東宝映画

監督:李相日

脚本:李相日

出演:渡辺謙、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、妻夫木聡

公開日: 2016/09/17

ジャンル:サスペンス、ヒューマン



「怒り」は、東京、千葉、沖縄の3箇所を舞台に、身元不明の殺人犯の疑いがある

3人の男とその周囲の人との係わり、人間関係を描いたサスペンス映画です。


原作は吉田修一さんで「悪人」もおもしろかったため、同じ原作者と監督のタッグ、

妻夫木さん主演ということで楽しみにしていました。


冒頭、浴室に二つの死体があり、警察が検分しているシーンから始まります。

現場には「怒」と血で書きなぐったような跡が残されています。

(ちなみに南条という刑事役をピエール瀧さんが演じています。

冒頭が狂気じみた事件現場でピエール瀧さんが颯爽と登場してしまったために

映画「凶悪」のイメージから、あれ?これ刑事が犯人なんじゃとちょっと思ったり……)


映画は、この事件の犯人が捕まらないまま1年が経過した

千葉、東京、沖縄の3箇所を舞台にしており、身元不明の男と

周囲の人との出会い、そして、お互いの仲が進展していく様子が描かれます。


しかし、中盤以降は警察が新しい犯人に関する情報をテレビで放送したこと等により、

周囲の人が「もしかしてこの人が犯人なのではないのか」という疑念を抱く形で

進展していき、終盤では誰が犯人なのか、疑った人と疑われた人がどうなっていくのか

が怒涛の勢いで進んでいき、語に深く引き込まれてしまいます。

(沖縄編については、また別の事件があり、若干様相が変わってきますが)


誰が犯人なのかのサスペンス要素もあるのですが、終盤の人間関係、

人を信じられるか、裏切られたときにどうするかを見てる人に訴えかける

場面が多く、とても印象的な映画でした。



3箇所の舞台の共通点について


さて、複数の点が終盤に線となるお話は定番であり、

本作の3つの舞台が終盤に線となって繋がるのかどうかという話もあると思いますが、

ここではそちらの話は置いておいて、3つの舞台の共通点についても話を残しておきます。


まず、物語の根底として身元不明の男がいる、があります。


そして上記以外の共通点で一つ気になったことがありました。

それはお弁当(差し入れ)の存在です。


千葉編では松山ケンイチさんが身元不明の田代君役を演じており、

渡辺謙さんが演じる槙洋平のもとで働いています。そして、宮崎あおいさんが

槙洋平の娘の槙愛子を演じており、愛子と田代君の仲が良くなっていく

様子が描かれています。


その仲が良くなっていく様子がわかるシーンとして、愛子が父親の洋平に

「お弁当」を持っていき、その際に“田代君にもお弁当を一緒に作ってきてあげようか”、

という場面がありました。

確か先週記事にした漫画の「orange」にもお弁当を作ってきてあげようか、

という場面があったような気がします。

そんなの恋愛漫画の世界だけかと思っていたのですが、私には縁がなかっただけで、

こういう感じでポンポン出てくるくらい日常のことなのかもしれません。


そして、東京編では綾野剛さん演じる身元不明の大西直人が、「お弁当」を買った後の

帰り道の途中でレジ袋内のお弁当の位置が気になるのか、もたもたとぶきっちょに

苦労しながら弁当の位置を直そうとし、その後姿を妻夫木聡さんが演じる藤田優馬が

微笑ましく見た後で声をかけるという、なんともほっこりする場面が見れます。


また、沖縄編でも森山未來さん演じる身元不明の田中さんの名前を、

広瀬すずさん演じる泉が知るきっかけは「差し入れ」でした。

(ただ、映画だと「缶詰ばっかじゃ 飽きると思って」という台詞のみであり、

実際にどういったものを差し入れているのかが判別つきませんでした(見落とし?)。

勝手にお弁当だと思っているのですが、原作では明記されているのでしょうか。)


「人の心をつかむ道は胃袋から」とはよく言ったもので、この映画でも

こういったのほほんとした場面があり、仲が進展していく様子がよくわかるからこそ、

終盤の怒涛の展開に繋がっていくのでしょう。



エンドクレジットの順番について


ここからは更なる駄文となるのですが、エンドクレジットの順番が気になりました。


エンドクレジット:渡辺謙→森山未來→松山ケンイチ→綾野剛→

 広瀬すず→宮崎あおい→妻夫木聡

(東宝MOVIEチャンネルの「怒り」予告動画のクレジットもこの順番)


映画の世界の上下関係についてどうなっているかはわかりませんが、

本作品の主演7人の役の格としては同格だと思っている中で、

どうしてこの順番だったのでしょうか。


例えば単純に登場順だということであればそれでスッキリしたのですが、

恐らく、登場順は次のようになっていたはずです。


登場順:渡辺謙→宮崎あおい→妻夫木聡→広瀬すず→

 森山未來→松山ケンイチ→綾野剛


ということで登場順ではありません。


ちなみにこの作品の主演7人を巻頭にもってきた雑誌「ピクトアップ 2016年10月号」は

渡辺健さんを中心として次の立ち位置関係となっています。


広瀬すず、綾野剛、妻夫木聡、渡辺謙、宮崎あおい、松山ケンイチ、森山未來


恐らく芸暦や年齢という意味合いでは上記の立ち位置がしっくりくる気がします。


ということで、恐らく渡辺健さんを別格として、身元不明の3人を先に出して、

その3人の順番に合わせて関連する3人を出したのだと思っています。

ただ、その場合どうして森山未来さんが先だったのでしょうか。


別に不満とかあるわけでは一切ないのですが、すっきりしないなぁ~という

思いがあるため、いつかわかればいいと思っています。



愛する人を信じられるか、を取り扱った作品について


昔、日本テレビ系列で野島伸司さん脚本の「世紀末の詩」というドラマがありました。

竹之内豊さんと山崎努さん主演で、1話完結型で「愛」をテーマに扱っているドラマです。

(7話のゲストで参加された池脇千鶴さんは「怒り」にも出演されていますね)


5話の三上博史さんがゲスト出演された「車椅子の恋」が愛する人を信じられるかという

テーマの話で、山崎努さんが演じた教授の以下の言葉がありました。


俺も昔大事な人を信じなかった。
今思うとしかし愛ってのは信じることですらないのかもしれん。
愛ってのはただ 疑わないことだ。


今もなお、この作品の台詞のいくつかが非常に印象に残っています。

(ってことで何とかDVD化してくれないでしょうかね)

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