小説 ~風に舞いあがるビニールシート~

風に舞いあがるビニールシート(かぜにまいあがるびにーるしーと)

著者名: 森絵都(もり えと)

出版社: 文藝春秋(文春文庫)

発売日: 2006/05

ジャンル:ヒューマン


「風に舞いあがるビニールシート」は森絵都さん著作、結婚と仕事の狭間で揺れ動く女性や、レポート代筆のために噂の女子学生との交渉を試みる男子学生といった様々な主人公を通して、各々の価値観や大切なものに焦点を当てている全6編からなる短編集です。


「器を探して」、「犬の散歩」、「守護神」、「鐘の音」、「ジェネレーションX」、そして表題作である「風に舞いあがるビニールシート」の計6つの作品で構成されています。


本作品は第135回直木賞を受賞しており、また、表題作はNHKの土曜ドラマの原作にもなっています。

著者の森絵都さんは本作品以外にも児童文学を中心に数々の文学賞の受賞暦があります。



あらすじ


クリスマスイヴの日、付き合って二年となる恋人の高典との約束を控えていた弥生はその朝、マスコミからも注目され、弥生自身も尊敬するパティシエのヒロミから三日後のプディング撮影に使用する器を岐阜で探すように命じられます。


ヒロミの御守りとして、このような無茶なことを要求されるのは慣れっこな弥生ですが、今回ばかりは恋人から自分を選ぶか、あの女を選ぶかとせっつかれることになります。


当初はすぐに素敵な美濃焼の器を発見して帰京すれことも考えていた弥生でしたが、そもそも弥生自身がヒロミの命令とは関係なく自身の仕事に誇りをもっていたこともあり_


(第1編「器を探して」)



感想


社会人や学生、主婦といった様々な男女を主人公に各々の価値観や大切なものに焦点をあてた短編集、私が特に好きなのは「犬の散歩」と「風に舞いあがるビニールシート」でした。


基本的にどの作品も誰か、何かを助けるという面があるのですが、先に挙げた2作品では主人公、もしくは主人公にかかわる人が命に直結することを扱っており、また、本当に他のものを犠牲にしてまでしなければならないかということがポイントにあるように感じました。

そして、他人の価値観を100%理解することは難しくとも、登場人物が何かを理解しようとしている場面がとても印象に残りました。短編ではあるのですが読み応えがあります。


「犬の散歩」で牛丼何杯分や犬の餌何回分といった物換算に関する話が出てくるのですが、給料何か月分やバイト何日分といった金換算ではなく、物換算できるのは、ある種、それが大切なものである証明であり、そういった生活は素敵なものだなと思います。


話の内容とはまったく関係ないのですが、この表題作を読んだ後は春の花見シーズンの大量のブルーシートを見るたびに平和だなぁと思うようになりました。平和だなぁ~


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