公演:img Act1 「The Entertainer〜新しき旗〜」
演出: 八重島ツカサ(img)
脚本: 八重島ツカサ(img)
公演期間:2018/03/01(木)〜2018/03/05(月) 全8ステージ
公演会場:シアターグリーンBIG TREE THEATER
ルド女の「未来への十字架」をきっかけに気になっていた、あわつまいさんが出演されるということで3月3日(土)に舞台「The Entertainer~新しき旗~」の夜公演(ソワレ)を観劇してきました。
※ネタバレ有、個人的感想強め、記憶があやふな部分がある点をご了承願います。
あらすじ
以下、imgオフィシャルブログ様より引用しています。
「歌って、踊って、言葉を吐けば。もうお前はエンターテイナーだ」
旅役者だった祖父の言葉を受け、エンターテインメントの世界に飛び込んだ
「宮島幸音(みやじまゆきね)」
彼女のエンターテイナーとしての人生は意外と順風満帆だった。
だが、そんな中次第に幸音はエンターテインメントに疑念を抱き、逃げ出す。彼女は奇妙な知り合い「イカマサ博士」に助けを求める。
イカマサは時空を飛び越えることができるという発明品を完成させた所だった。
幸音はそれを無理やり作動させてしまう。意識のかすむ中、大きな音と光が包む。
幸音が目を覚ますとそこは見たことのない場末のバーだった。
そこには歌い手や踊り子、そして旅役者の「演人(えんじん)」の一座がいた。
突如なるサイレン。逃げ出す一同。
「この国はエンターテインメントが検閲されている」
これはエンターテインメントを信じる人と、抗う人の物語。
キャスト
以下、imgオフィシャルブログ様より引用しています。
八坂沙織
南翔太
若林倫香
田上真里奈
小田あさ美あわつまい
木下彩
倉持聖菜
安達優菜
鈴木友梨
宮井洋治
田中爽一郎
大貫紗貴
川崎優太
石川勇人
金谷優里
藤原琢真
谷口航季
髙木聡一朗
寿里
上記のように総勢20名の出演者となっています。
個人的には富山県出身の宮井洋治さんが特に注目でした。
そして、本作品はキャストも務める谷口航季さんと、監督と脚本を務める八重島ツカサさんが中心となっている団体「img」さん主催の公演となっているようです。
過去には次のような公演があります。
img Pre1「明日の卒業生たち」2016年4月24日~5月1日
img Pre2「放課後に星はみえるか」 2017年2月15日~20日
img Pre3「それじゃまたと言って」2017年7月13日~23日
※「奇跡の花たち」、「きっと夢じゃない」
mg×ナナシノ( )コラボ企画「綻び踏んで笑えたら」 2016年10月14日 ~ 10月23日
その「img」さんのコンセプトですが「特定の団体に属さない表現者たちが集い様々なエンターテインメント活動をする団体」となっているようです。
本作品はそのエンターテインメントにこだわった団体が、"エンターテインメント”をテーマとした舞台に挑戦していること、そして公演時間も2時間30分(10分の休憩含む)と、かなり期待した状態で観劇してきました。
ストーリー補足
後で見返したときのための簡単な補足情報です。
・幸音は芸能に関する仕事をしていたが、仕事がどんどん多忙になっていき旅役者であった祖父の死に目に会えなかったことで疑問を抱いていきます。
「エンターテインメントは祖父を救えましたか?」
・それでも仕事の関係者に追われる幸音はタイムマシンを利用して別の時代に逃げ込むことになります。
・幸音が到着したのは2033年の新宿、通称、芸能法という法律が制定され国によって「エンターテインメント」が厳しく検閲されている時代でした。
・幸音は検閲の目をかいくぐって演劇をする演人(えんじん)の一座や歌や踊りで自分を表現するリンダと出会い、変わっていきます。
・2018年に日本に核が落とされています。
・芸能法は表向きは国を復興するために国民が一丸となって取り組むためです。
・芸能法は裏向きは富裕層から金銭を国が効率的に徴収するためのものです。
・劇中は幸音が到着してからとある事件が発生して(ここまで前場)、その後、1ヶ月経過します(ここが後場)。そして、最後は1年経過した場面で終演しています。
感想
以下、印象に残った点です。
・八坂沙織さん演じる幸音と田上真理奈さん演じるリンダの歌が特に素敵でした。
・執行官メンバーである宮井洋治さんと田中爽一郎さんは、台詞がないシーンでも表情や挙動が伝わりやすく、また、背丈や役割が二人でとてもいいバランスになっていて、本作品における名バイプレーヤーと感じました。
・倉持聖菜さんが演じるソラの健気な行動がひたすらに可愛かったです。
・2時間30分があっという間でした。
・リアルタイムでビデオカメラと舞台スクリーンを利用した演出、最後の演出もよかったです。
・タイムマシンというSF要素がありながらも、人に関しては極端なご都合主義、事なかれ主義を感じず、個人的に楽しめました(もちろん、何もかもすべてが上手くいくハッピーエンドでも、それはそれでかまわないのですが)。
・「エンターテインメント」に関して、きれいな部分だけ見るのではなく、金や欲、復興といった部分も丁寧に取り上げられていました。
・「エンターテインメント」を強く信じる人もいれば、まったく聞き耳を持たない人もいたり、意見が二転三転する人もいたりして、価値観を強要するのではなくいろいろな人の存在を認めているストーリーがよかったと思います。
・パンフレットが未完成ということで置いてありませんでした。個人的には納期や在庫については様々な事情等もあると思っているため、それはそれで構わないのですが、最悪、サンプルだけでも置いておくくらいの対策は講じて欲しかったです。
・2時間30分はこの内容だと短すぎたように思いました。前半~中盤にかけて幸音とリンダの仲が深まっていく様子をもっと見たかったと思えましたし、終盤のカナコの揺れ動く様子はゆっくりと見たかったです(連ドラくらい時間があれば、一人ひとりに焦点をゆっくりとあてていけるのでしょうが、今回の上演時間だと「エンターテインメント」とは?に対して、少し食傷気味になっていると感じました)。
逆に言えば、それくらい内容が濃かったと思います。
・金銭に関して、マクロ的な視点としてビジネスに関することを取り上げていましたが、せっかくならミクロ的な視点として幸音が衣食住をどうしているか簡単にでも説明が欲しかったです。このテーマにおける金銭的な問題は個人に関しても重要だと思いますし、また、職転々娘というおもしろいキャラクターも登場していたこともあって一層、その思いがありました。
そんなこんなでまとめた感想をメモしておきます。
『あなたが大切にしているものは何ですか?』
このアンケートをとった場合に恐らく上位に位置するのが、「家族」、「恋人」、「友人」、「健康」、「お金」、「仕事」、「夢」といったあたりでしょう。
ただ、多くの人にとって大切な何かとは複数あり、その中で銘々が優先順位を決めていて、またその順位も時間や環境の変化に合わせて変わることもあります。
この作品でも「エンターテインメント」をもっとも大切にしている人もいれば、「エンターテインメント」に大切な何かを奪われた人もいました。
そして、「エンターテインメント」を信じれるか、抗うのか、価値観が変遷する人もいれば、徹頭徹尾に捉え方が変わらない人もいました。
それは結局のところ、どれだけ想いがあっても伝わらないこともあるかもしれないという現実的なことも表していると思います。
しかし、私は本作を観劇して想いが伝わったと思っていますし、劇中の表現を用いれば間違いなく音が鳴らされたと思います。
「エンターテインメント」は素晴らしいと間違いなく思うことができました。
劇作家であるブレヒトさんの異化効果は言い過ぎかもしれませんが、あって当たり前のものをあえて禁止されているものとすることで、異質な世界の中で「エンターテインメント」の存在を客観的に見ることができ、その存在の大切さを改めて気づかせる素敵な舞台だったと思います。
エンターテインメントを活動する団体がエンターテイメントを真っ向から取り上げた作品、演じたエンターテイナーの方々も素敵でした。
歌って、踊って、言葉を吐けば
誰かの音を鳴らしたいと思ったら
想いが誰かの音になる
「img」さんは次回公演予定も決まっているようであり、次も期待したいと思います。
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