小説 ~13階段~

13階段(じゅうさんかいだん)

著者名: 高野和明(たかの かずあき)

出版社: 講談社

発売日: 2004/08/15

ジャンル:サスペンス、司法・法廷・犯罪


「13階段」は高野和明さん著作で死刑囚の冤罪を晴らそうとする傷害致死の前科を持つ青年と過去に死刑執行経験を持つ刑務官の二人が事件の謎を追うサスペンス小説です。


本作品は推理小説、ミステリー小説の最高峰と称される第47回の江戸川乱歩賞を受賞されています。


2003年には反町隆史さんと山崎努さんが主演で映画化もされています。



あらすじ


10年前の千葉県中湊郡で発生した保護司夫婦惨殺事件、状況証拠から犯人として死刑判決を受けた樹原亮(きはら りょう)は、事件のあった日のバイク事故の影響で記憶を失っており、身に覚えのない罪で死刑になるのか、不安に怯えながら独居房で過ごしています。


そんな中、請願作業中にふとしたことがきっかけで事件の一部の記憶が蘇ります。

事件のあった4時間のどこかで死の恐怖に怯えながら階段を登っていたと、しかし事件のあった現場の平屋には階段はなく……


一方で、2年前の傷害致死事件によって刑務所に服役していた青年、三上純一(みかみじゅんいち)は、模範的な態度を評価され仮釈放されます。


しかし仮出所に迎えに来てくれた家族の様子は温かいのですが、どこかおかしいです。

というのも、殺人犯の身内ということで被害者への莫大な賠償金を負担したため、弟も含めて困窮している状態であったためです。


そんな経済的に困窮している三上純一の前に、刑務官で看守長である南郷正二(なんごう しょうじ)がとある仕事を持ってきます。

その仕事の内容が、冤罪の疑いのある死刑囚樹原亮の死刑を回避するための証拠集めを弁護士事務所から依頼されてのものでした。


死刑執行が近づく中、刑務官と仮出所の青年が難題を解決できるのか、どうしてこの二人がこの案件に関わっているのか、死刑制度とはどのようなものなのか、これらを題材としたサスペンスとなっています。



感想


この話では刑務官である南郷さんが過去に死刑執行に実際に携わったときの様子も詳細に語られています。

あくまで仕事ではありますが、南郷さんがそれに悩んでいる様子、またそれを背負って生きている様子が重いです。


だからこそ、この小説の結末もまた、なかなか重いものを背負わせているなという気持ちになります。


この小説は登場人物が何を考えて、だからどう行動するのかが理解しやすい点がよかったです。


サスペンスと関係ないところでおもしろいなと思った部分は量刑基準に関する加害者の改悛(かいしゅん)の情の箇所でした。

死刑判決を受けた樹原亮は、記憶喪失であるがために、改悛の情(反省の態度)があるわけがありません。

しかし、もし自供して改悛の情を見せていれば、同じ罪でもひょっとしたら死刑判決を

受けなかったかもしれないという部分がなんとも皮肉な制度だなと思います。

他にも死刑制度に関する様々な情報がこの小説を通して得られます。



13階段の意味


尚、タイトルにもなっている「13階段」ですが、絞首台に向かう階段が13段だったからといわれています。

もっとも、この小説に出てくる死刑描写は踏み板が外れて落下する形をとっており、死刑囚が13階段を登るわけではありません。

では絞首刑に向かう13階段とは何なのかという話なのですが、遡ると、13階段は昔の西洋の執行室(刑場)の階段がそうだったという話のようです。


尚、西洋化に伴い「13日の金曜日」に代表されるように、"13"を忌み数として、嫌な印象があることを聞く機会が多くなっているかもしれません。

ただ、日本の階段は13段が多いという話も聞きます。

Yahoo!Japan不動産の質問サイトこちらのブログ記事を参考にまとめると

次のようになります。

・1階から天井までの高さは約2.1m(7尺)以上で一般的には約2.4m(8尺)が多い。

 (建築基準法21条で「居室の天井の高さは、2.1m以上でなければならない。」と

 法整備されているようです。)

・構造材や床板、配線スペース等を考慮すると、2階の床の厚さは0.6m位。

・階段の高さ(蹴上げ)は23cm以下とする。

 (建築基準法施行令 第23条 階段及びその踊場の幅並びに階段のけあげ及び踏面の寸法)


ということで、(240+60) / 23 ≒ 13 が多くなるようです。

(最近は天井の高い家が珍しくなくなっていると思いますが)


ジョーカーゲームに出てくるスパイになるような人間なら常に階段の段数を把握しているのかもしれませんが、普通は日常生活で階段の段数に興味を持つことはない気がします。


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